
まずは完成版をお聞き下さい。
キック
こちらのキック、実はキックのサンプルを4つ重ねています(笑)
今回はこのキックの作り方をご紹介します。
まずはこちらのキックの音作りのプロセスを聞いていただいて想像していただきましょう。
プロセス
キック音はともかく、ここまで詳しく解説してる記事は他にないと思います。
よろしくおねがいします!
目次
BPMを楽曲に合わせる
キックの基本
キックのサンプルを決める(一例)
サンプルを整える
サンプルの取捨選択
低域パートの微調整
プロトタイプ完成
音量調整
EQでの音質調整
完成
総評
BPMを楽曲に合わせる
今回もStudioOneを使ってやっていきます。
前回のサイトランス系のキックとは違い、がっつりEDM系のキックを作ろうと思うのでBPMを128に設定します。

StudioOneだと右下にあります。FL STUDIOだと左上の方ですね。各々のDAWで調整してください。
キックの基本
先日の記事、キックの作り方【Serum編】でもお話しましたが、
キックは基本的にサイン波(聴覚検査のあの音)のピッチの推移で成り立っています。
そのピッチの動きは基本的に高い音から低い音にかけてスイープしていきます。
以上を踏まえて見て聞いていただけたらと思います。
まず、キックは大きくわけて3つのパートに分かれます。
EQで低音中音高音と分けるんでしょ?
そう思ったあなた、違います!
Tick Tock Tailといえばわかる方はいらっしゃいますか?
キックをトランジェント、時間軸で分けるのです。
短い最初のアタック(中高域以上)がTick、中低域くらいまで含んでいるアタックがTock、最後、低音担当のTailです。

キックのサンプルを決める(一例)
普段は3つ(アタック2テイル1)に絞ってつくるのですが今回は4つになりました。
チュートリアルなのに、素材が手に入らないのはおかしいので
すべてフリーダウンロードの素材を使っていきます。
1. Cymatics - EDM Starter Pack

まず、自分が目をつけたのは
CymaticsのEDM Starter Pack
一応EDM系なのでこのサンプルパックから見ました。
フリーで探すとやっぱりCymaticsの上に出るものはいないんじゃないか、というくらいハイクオリティです。
興味ある方は→Cymatics
ちなみに有料のパックもいい音してます。トラップ、ダブステップを中心に使える音盛りだくさん^^
2. Cymatics - Kicks Collection Vol.1

続いてこちら同じくCymaticsでKicks Collection Vol.1です。
この中ではHouseが作るジャンルに最も近かったので、その中から好みのものを選択しました。
3. Cymatics - Kicks Collection Vol.2

今度はVol.2ですね。
こちらはKeyの記載があるので楽曲のKeyを選択しました。
スケール内の音階なら他の音階でも大丈夫だと思います。
あとで歪ませてトラックに混ぜた時に違和感が出ないように、スケール外の音階を選ぶのは避けましょう。
4. Alonso Sound - Revealed Producer Starter Pack Vol.2

そして最後はこちら、Alonso SoundからRevealed Producer Starter Pack Vol.2
こちらからキックを選択。
今回楽曲をKey: Eで作る予定なのでEから選択しました。
フリーとは思えないほど使えるサンプルだらけです。
ちなみにVol.1もあります。
有料だとRevealed Drums Vol. 2がおすすめです。Vol.2がいいです。(←重要)
サンプルの選択方法
選択したキックを画像の順番通りに再生したものが先程聞いていただいた、
最初4つのキックになります。
聞いてもわかるとおり、どれもキャラクターが違います。
最後2つは音が似ていますが、重ねる時に片方はアタック、もう片方はTailとして使っています。
ちなみに4つ目は後から重ねました。
そしてコツとして必ず違う特徴を持ったキックを選んで下さい。
サンプルを整える
これはやらなくてもいいですが、1/8に揃えておいたほうがいいです。
いずれかの段階で後半はカットしてしまうからというのがその理由です。
なら先にやってしまおう、と。
↓のような感じです。

では、なぜ後半はカットすべきなのでしょうか?
後半はただ低音でサイン波が鳴っているだけで、クラブやシアターなどの環境を除き、ほぼ聞こえないというのもあります。
しかし、それ以上にベースが入る隙間が必要だからです。
短すぎて低音が含まれていないとパンチのないキックになるけど、伸ばすとベースの低音とかぶってしまうのです。これがもしベースの低音とキックの低音で波形が反対(逆相の関係)だった場合、打ち消し合って迫力がない音楽になってしまいます。それは絶対避けるべきです。
サンプルの取捨選択
取捨選択というとここから減らすの?!と思うかもしれませんが、
どのサンプルをどのパート(TickTockTail)に分けるか決めるのに、残りの部分はカットするからという意味でサンプルの取捨選択という題名にしました。
ちなみに、今回はこのように分けました。
順番に再生します。
やり方
ある程度短くしてキックのキャラクター部分だけを聞けるようにします。
まずは↓のような感じ

各キックのキャラクターに合わせてここからさらに長さを調節しますが、
この時波形の上の部分が先頭にくるように調整したほうが作業しやすいでしょう。
最初の方にある空白(赤丸)をカット、ですね。

コツ
TockだけでなくTickの短い音を1個入れるとよいです。レッド↓
また、音量は均一のままで動かさないほうが良いです。オレンジ↓
その理由は音量が大きいほうが人間の耳では良いと感じてしまうため、キャラクターを均一に評価できなくなってしまうからです。
そして、後ほどEQでそれぞれ補正するので、スペアナがあるほうがオススメです。
ちなみに個々のEQ補正はしなくてもOKです。
アタック部分も一番短い音以外は微妙に位置をずらして逆相部分を減らすようにしたほうがかっこいいキックになります。これは波形を見るのをメインに、耳で聞きながら判断して下さい。
今回はアタック部分を適宜カットして、Tailを除いたすべてのサンプルを先頭に持ってきています。

水色の箇所は低域パート微調整で説明します。
あと、すべてのパートにフェードアウトを適用したほうがプチっというノイズがなくなるので良いと思います。上画像だと黄色の部分です。

低域パートの微調整
最後サンプルを重ねた結果、下のような形になっています。
これでは低域が重ねって変な音になってしまいます。
最終的に赤丸のような形になるように整えると良いです。↓

そしてこちらはサンプルを拡大したものですが、真ん中の隙間がどれくらいあるかなんとなく把握してそれに合わせて、Tailの位置を調整するとよいです。↓

今回のキックでは、下の画像のように並べました。
必ず、前のサンプルが下で終わったら、次のサンプルの始めは上から、
あるいは前のサンプルが上で終わったら、次のサンプルは下から始めるように調整してください。
耳で判断してもいいですが、僕はスペアナで100-200Hzくらいの間からTailがスタートするくらいで調整します。
↓

たまに波形が上から始まって上で終わるほうがいいという情報がありますが、
ぼくはどちらでもいいと思います。
始まりは基本的に上から始めてますが、絶対ではないと思います。
あくまで方法論であって、目的は最終的な出音なので。
ここまでで
プロトタイプの完成です!
音量調整
続いてDTMのミックスの過程において最も重要なフェーダーワーク(音量調整)に入っていきます。
下の画像で言うとオレンジの部分ですね。
ここから各キックのキャラクターを決めていきます。
これは楽曲の雰囲気や、自分の好みで決めていきましょう。
コツとしては、水色で囲まれている、赤丸から数えて4つ目のTock部分は低域の美味しいところが含まれているので基準にするといいかもしれません。

こちらが今回調整したキックです。
音量調整済みキック
EQでの音質調整
正直プロトタイプあたりからは好みの問題だと思いますので、切り上げるタイミングは自由です。
今回はこのようなEQ補正を使いました。

正直この作業はなくてもいいと思いますが、やるのとないのとでは意外と雰囲気が変わります。
高音の耳障りなところは少し削り、アタックが強調されるところはブーストしてます。
これは耳で判断します。コツは狭いQでブーストして少しずつ動かしてみることです。
500-2KHzあたりは今回のKeyであるE(ミ)の音を強調しています。
200-500Hzは楽曲中の混ざりに影響するので、多くの場合はカットしちゃいます。
私は硬めのキックは300-400Hzあたりを削り、
トランスなどにある909系の(スペアナで500Hz以下がよく出ている)キックは250Hz近辺をカットするようにしています。
低音に関して、後の処理では倍音を負荷することに重きをおいているので、
この作業でブーミーな箇所は削り、美味しいところはブーストしています。
大きくても3db未満の変化ですが、
6dbで2倍音量違うので3dbは単純計算だと(整数換算で)1.41倍音量変化があることになります。
正直今回は比較的多くの環境で可聴域となる低音のカットとブーストがかなり差が出たと思います。
低音の調整は音量を上げないとうまくいかないですし、Sonarworksは外したほうがやりやすいと思いました。
この過程で一番の魅力は作業がとっても楽しいことです。たぶん自分ミックスするの好きなんだな・・・
結果はこんな感じです。
EQ補正済みキック
一つ前の音量補正済みキックと比べてみましょう!
低音の質感が変わり、硬い感じになって、中域と高域のブーストによる明るさと丸みが同時に出てきたように感じます。しかしその分、迫力は減ったように思うので後ほど倍音を付加しようと思います。(私個人の感想です)
サウンドクラウドで聞いても変化はわかると思います。
ちなみにこちらがその補正済みの波形です。
EQを使うと位相が変わって、少し前から波形が再生される場合があるので確認したほうがいいです。

完成
こちら完成したキックですが、もちろん加工してあります。
その加工工程を画像で紹介しようと思いましたが、撮った時と変わっていますので軽く紹介する形で終わらせていただきます。
まず最初にうっすらDOTEC-AUDIOのDeeFat、次にSlate DigitalのVBC FG Red、Kush AudioのOmega N、そしてDeeMMaxでピークを削り、SoftubeのSaturationKnobで低域を持ち上げて、SonnoxのOxford Inflator複数挿したりで音質調整してたと思います。
解説
最初にDeeFatを挿す事で音が太く、その後のエフェクトのかかり具合がよくなります。
VBCは結構アタックが持ち上がるのでOmegaNで太さの方にシフトしました。
SaturationKnobはハードスタイルキックを作る時にもよく使いますが、バーをLowにやることで低域を強めにサチュってくれます。今回普通のキックには初めて使いましたが、いいですね~
Sonnoxは整えるのに便利です。
あと、EQの補正ではDMG AudioのEQuilibriumを用いてます。実はまだ体験版です。
最後の補正も好みなので正解はありませんが、低域のエンハンサーは持っておいたほうがいいと思います。
正直なところ、順番もこれが最善だとは思ってませんので、ご自身で最善策を見つけたほうがいいと思います。
総評
非常に長い工程にもかかわらずここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。
私自身、手持ちのサンプルをそのまま楽曲に入れてもいいとは思いますし、海外の人は結構商品化されたサンプルをそのまま曲に使ったりしてます。正直、好み次第だと思います。
しかし、自分でキックを作れる作れないの差は大きいと思っています。
ほしい雰囲気に近いサンプルが見つかればいいですが、突き詰めると自分で作れたほうがいいと思います。
頭の片隅においていただけると嬉しいです。
ちなみに、私は楽曲に必ず1個は自作のキックを入れるようにしています。
また、今回は入れてませんが【Serum編】にあるシンセでのキックの音作りをあわせて、
低域はシンセに担当させるというのもありです。その際はオーディオに書き出して同じように波形を並べてみるといいと思います!
ぜひ、実際に試してみてキックの音作りの楽しさをわかっていただけると嬉しいです:D
追記:
後日、別のキックを3個ほど作ったので、要点をまとめます。
要点
・TickとTockは音がかっこよければ良い。
・ボリュームの調整でキャラクターを決める。
・TickとTockは波形のどの部分からでも、どこに配置するかまで自由。
・Tailは位相に注意、音量は他より大きめにしておく。
・低音がかっこいいサンプルを選ぶ←CymaticsよりRevealedの方がよかった。
加工について
・EQはもしかけるなら後半のほうがいいかも
・SaturationKnobは悪くないが、良くもない。
・DeeFatはかけなくてもいいが、わずかにかけるといい
・Sonnoxはキックをそのまま使う時などにキャラクターを大きく変えたくない時はいいが、重ねて作る時はイマイチ
・VintageWarmer2とコンプを2つずつかけたらよくなった。
例
VW2 Knee1.0↑ 4KHz1db↑ 100Hz0.5db↑
VW2 Drive2.0↑ 13KHz1db↓ 50Hz0.5db↑
コンプの設定は別記事で書こうと思います。お楽しみに。
追記2:
Soundcloudに新曲をアップロードしました。
後日作ったキックを曲中に使っています。
サンプル編で作ったキックはTail部分を担当しています。
今回もお付き合いいただき、ありがとうございました。
これからの記事更新もお楽しみに!
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— MazQ / MusicMaker (@MazQmusic) 2019年1月30日
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